しっぱいだん その1 初音ミク『メルト』を描いてみた。

木内ハジメ(デザイナー、イラストレーター)
オンラインゲームを与えないでください

まぁ、いろいろとあるわけですよ。
いそいそと仕事をしてね。そいで稼いだ金のほとんどがサバゲーと自転車用品に消えていくという。気が付いたら財布の中身が1000円札1枚だけになっていて「あれ? 給料日まであと2週間もあるぞ?」っていう状況ね。ああ、消費者金融ってこういうときのためにあるんだなぁ、なんて考えてみたりして。
まぁ武士は喰わねど高楊枝ってね。親に土下座して5000円借りて「ああ、これじゃあたぶん足りないんだろうなぁ。もっとくれないかなぁ」なんて思ってみたりして。で、臨時収入があったんで、ケンタッキーフライドチキンを昼食に食してみたりして。
そんな人生そのものが失敗談で出来ている僕に、我が社の社長は言う訳ですよ。

「過去に描いた絵をブログにして上げて」

ほほう。するってぇとそれあれかい? 僕のうんこを世界中に向けてアピールしろってぇ、そういうわけかい?
すでにpixiv[http://pixiv.me/flcl1129]とかにもアップしてて、それを考えるだけで胃が痛い僕の絵を、解説付きでブログにしろと。そういうわけなのかい?

はっはっはー。元気がいいね社長さん。なんかいいことでもあったのかな?

まぁ社長命令なんでね。やりますよ。やってやりますよ。消化不良のコーンがぎっしり詰まった僕のうんこの解説を。
自販機で売ってるコーンスープってなんであんなにおいしいんでしょうかね? 思わず飲みすぎちゃいますよね。

さて。じゃあ僕がデジタルイラスト超初心者なのを前提として話を進めていきますね。

主に商業絵でなく練習絵を使って説明していきます。
社長の提案で「ボーカロイドの歌を絵に起こしていこう」という事になったので、第1回目の課題は「メルト」でした。

「メルト」ですよ。「メルト」信じられますか?
この人、ニコニコ動画だけでも900万再生を記録してる曲をいきなり「イラストにして」と言ってきたんですよ。正気とは思えない。
社長命令なんでね。やりますけど。やりますけどね。「メルト」って。
いや、好きですよ「メルト」僕も大好きなボカロ曲です。
でもねぇ。。。
うん。まぁいいや。もう気にしない。どうせ「メルト」のイラスト描いてる人間なんて無数にいるんだろうから、その中に埋もれてしまえばいいんだ。
そんな思いで適当に描いたラフがこれ。
New Project

これだけ。
なんか他にも色々と描いた気がするんだけど、忘れてしまって、しかもデータがどこにあるかも分からないんでこれしか載せません。

この時点では「あ。なかなかいけるんじゃない?」なんて思ってました。そういう時期が僕にもありました。

で、そこから少しクリンナップしてみた絵がこれ。
New Project

うーん。まぁ…。いいんじゃないですかね。下手ではないと思いますよ。
鉛筆画だから迷い線とかで絵の印象って底上げされるんですよね。その良い例がこれだと思います。

でも何か物足りない。何かが足りてない。それが何かが分からない。
ここが多分今回の失敗談その1。
「何も考えずにラフにOKを出した」

・ここがどこで
・だれが
・何をしているのか

が全く分からない。そして目が死んだ(ずれた)。
目の「ずれ」は直すのに大変苦労しました。。。
その絵がこれ。
New Project

そして失敗談その2。「そのまま作業を強行した」。
まだ引き返せる状態だったのに、この絵に固執してしまったのが失敗談です。

で、線画をデジタルでクリンナップしました。
このころはSAIを本格的に使い始めて何カ月も経ってない時期だったので、線が綺麗に引けなくてとても苦労したのを覚えています。
その絵がこれ。
New Project

あれれぇ?
あっれれれぇ?

これ、ひょっとして行けるんじゃないの?
思ってた以上にいい感じになってるじゃん。
よし頑張って次行こう!
次は着彩だ!

まずマスクで色を分けて。。。
New Project うん。いけてる。いけてるよ、僕!
どんどん色を塗るよ!
凄いじゃん、僕。やれば出来るじゃん!

New Project

はい。
はい。
はい。
非常に申し訳ございませんでした。
なにこれ。
何この目。
なんか気持ち悪いんですけど。
カマキリみたいに見えるんですけど。

ここから僕の大いなる旅が始まった。
中略
目覚めるとそこはいつも通りの変わらない僕の部屋だった。枕元にはには大きなホラ貝が置かれていた。
僕はこれが彼からの精いっぱいのメッセージなのだと受け取った。
ありがとう。その言葉を心の中で呟きながら、息をめいっぱいに吸い込み、ホラ貝を吹いた。「全軍、突撃っ!!」。彼の言葉が脳裏に鮮やかに蘇る。
と、隣の部屋の壁が「どんっ」と鳴らされた。
「うっせーんだよ、このボケカス!」。
「す、すいません」
謝った僕の目にはあふれだしそうなほどの涙が溜まっていた。
僕は彼のおかげでかけがいのないもの…「友情」を手に入れた。
異世界の彼に叫ぶ。
「ありがとう! 本当にありがとう!」
壁が鳴る。
「だから、うっせーっていってんだろが!」
「す、すいません」
明日僕がやらねばならないことは決まった。
隣の住人にピーナッツバターを届けるのだ。
これが、僕の出した結論だ。

完成品↓

New Project

はい。手遅れでした。

了。